第一回 パワーチェック大会 レポート
For Roadster

去る4月28日に行いましたパワーチェック大会。
遠方より多くの方に参加頂きました。誠に有難うございました。
多忙な毎日でレポートが遅くなりました。

全体的な総評としましては、過激なフルチューニングは少なく、どちらかと言えばフィーリング重視のチューニングが多いのが特徴でした。
まぁ考えてみれば、過激なフルチューニングは確かにお金も掛かりますし、それなりに使い勝手を考えてセットアップもしなくてはなりません。
市場の需要としては、その殆どはファインチューニングにあるようでした。
走行距離的問題からの基本O/Hの依頼もマルハでも確かに多く、金銭面、使用目的からもあまり過激にしたくないのが一般ユーザーの心情と言ったところのようです。
中には4連インジェクションシステムもありましたが、キャブレター仕様はゼロ。
今回はたまたまなのでしょうが、皆さん御忘れなく、WEBER、SOLEX, FCRとキャブレターは非常に楽しいチューニングアイテムであるのです。

さて、馬力的には前述のように、過激でない分ソコソコの数値ではありましたが、
日常の使用と峠を気持ち良く流すには充分と言う感じでしょうか。
でも、特筆するべき点はいくつもありました。
エンジンパワーへの憧れは自動車好きなら誰でも持っている単純なモノです。
新型が発表されると必ず真っ先にチェックを入れるのがスタイル、パワー、価格。
三種の神器の一つがパワーなんです。
ロードスターのパワーは今の時代 他メーカーのライバル車(ライバルになり得るか?)
と比べれば最新のRSでさえ160PSと振るわないのが実情。
NA(ノンターボの意)と言えどもやはりリッター・100PSは欲しいところ。
つまり1.8Lであれば180PSは欲しいのですが、この辺がメーカーの考え方の違いか?。
より大きなパワーは誰でも期待するはずなのですが、チューニングの事で相談を受けると"そんなにパワーには拘っていません"っと断言される方も少なくありません。
どこかで、今までのロードスターのエンジンの在り方に慣れてしまっている部分も否定は出来ません。
もしですよ、新型NEWロードスターが4連200PSだったら、"オー??"っと少しながらも期待をしませんか?
このスペックは最近雑誌なんかで取り上げられていますが、未だ実態は見えません。
F-4時代のレースノウハウが今 少し一般車両にフィードバックされるのでしょうか?
これからの時代は厳しいエミッションコントロールと言う大きな大きな課題をメーカーは常に背負わなくてはなりません。
果たしてそれら厳しい課題を見事にクリアして雑誌通りのスペックが本当に世に出るのか非常に楽しみです。
それにしても、買う.買わないは別として乗ってみたいと言う衝動に駆られるではありませんか?。
そう思った方は間違いなくどこかでパワーのあるエンジンを期待しているのです。
こう書いたものの、実際に新車で買った1989年(私のは初期型NA6CE)、オープントップで走った最初の感動は未だ忘れられません。
つまり、全体的バランスや自分のイメージが個々にあるわけで、そういった意味合いからは絶対的パワーばかりを求めるのは少し野蛮かもしれません。
インテリジェンスの欠片も無い私はついつい直線的思考が働きがち。
もう少しコームダウンの必要性もあります。

さて、最大パワーばかりが焦点では片手落ち、実際に走ってみて気持ちが良いあるいは力がある、そんな風に感じるエンジンは低速、中速域の制御が良いのです。
そしてトルク。
トルクは非常に大切です。どうもカタログスペックは馬力に気が行ってしまいますが、やはりトルク。
トルクが太い車ほど乗っていて面白い事はありません。
ポルシェに乗って見ると良く分かります。
NA(自然吸入)の場合排気量と大きく関係してしまいます。
マルハのNA1600のレースカーも210PS以上を搾り出しますが、トルク的には17〜18kg程度。
僅か78mmピストンで9000rpm以上を回してもトルク的には限界。
コレを上回るには排気量のアップになります。勿論レースでは規則違反!!!。
例えばBPのマルハチューニングで264度マルハカムでも200PSを超えるメニューがあります。
この時の最大トルクは20kgを超えます。
NAで20kgを超えてくると、流石にパワーを強く感じます。 
低速域からの加速も非常に力があり、結果的にはこう言った立ち上がりの鋭い仕様がミニサーキットでは圧倒的な速さに繋がる可能性が高いのです。

前振りが大分長くなりましたが、今回のパワーチェック大会の全体的結果一覧から紹介しましょう
型式 年式 走行距離 最大馬力 回転数 最大トルク 回転数 エンジンO/H暦 主要
NA6CE-F 平成2年 125,000km 139PS 6800RPM 15.7kgm 6000RPM カム,ピストン、ROM
NA6CE-HG 平成3年 88,000km 157PS 7270RPM 16.4kgm 6400RPM カム,ピストン,トヨタ4連,フルコン制御
NA6CE-K 平成5年 92,000km 150PS 7080RPM 16.7kgm 6010RPM カム,ピストン、FREEDOM
NA6CE-S 平成3年 50,000km 125PS 6840RPM 13.5kgm 5750RPM カム 
NA6CE-HJ 平成2年 110,000km 138PS 6930RPM 15.2kgm 5280RPM ピストン
NA6CE-N 平成2年 91,000km 124PS 6880RPM 13.9kgm 5820RPM FREEDOM制御
NA6CE-E 平成3年 102,000km 150PS 6870RPM 16.0kgm 6100RPM カム、ピストン、
NA6CE-B 平成2年 71,700km 130PS 6700RPM 14.7kgm 5900RPM  
                 
NA8C-O 平成5年 83,250km 137PS 6670RPM 15.8kgm 5520RPM インテークパイプ
NA8C-Y 平成6年 94,000km 146PS 6800RPM 16.1kgm 5600RPM M2−1028
NA8C-OK 平成5年 83,000km 137PS 6620RPM 15.7kgm 4610RPM  
                 
NB8C-I 平成11年 16,500km 161PS 6680RPM 17.4kgm 5080RPM ファイン

 


NA6CE B6

型式 年式 走行距離 最大馬力 回転数 最大トルク 回転数 エンジンO/H暦 主要
NA6CE-F 平成2年 125,000km 139PS 6800RPM 15.7kgm 6000RPM カム,ピストン、ROM
NA6CE-HG 平成3年 88,000km 157PS 7270RPM 16.4kgm 6400RPM カム,ピストン,トヨタ4連,フルコン制御
NA6CE-K 平成5年 92,000km 150PS 7080RPM 16.7kgm 6010RPM カム,ピストン、FREEDOM
NA6CE-S 平成3年 50,000km 125PS 6840RPM 13.5kgm 5750RPM カム 

型式 年式 走行距離 最大馬力 回転数 最大トルク 回転数 エンジンO/H暦 主要
NA6CE-HJ 平成2年 110,000km 138PS 6930RPM 15.2kgm 5280RPM ピストン
NA6CE-N 平成2年 91,000km 124PS 6880RPM 13.9kgm 5820RPM FREEDOM制御
NA6CE-E 平成3年 102,000km 150PS 6870RPM 16.0kgm 6100RPM カム、ピストン、
NA6CE-B 平成2年 71,700km 130PS 6700RPM 14.7kgm 5900RPM  


1. NA6CE B6

トルク:
トルクの面から判断すれば、B6は16kgを超えてくればマズマズの出来栄えと思います。
誰が乗っても比較的パワー不足を感じるエンジンですが、ここで有効なのがピストン交換。
耐久性を重視しての鍛造品であるかどうかは今回は別として、それ以外にピストン交換には2つ目的があります。排気量アップと圧縮比のアップ。
トルク16kgを超える物は全てピストンの交換がなされています。
リスト上はピストン交換となっていても、80〜82MMの大きなピストンもあれば、マツダ純正(ファミリア、フェスティバ等)の78+0.25MM位のオーバーサイズも有ります。
ボアに比例してトルクが大きくなっているのも今回の測定の結果です。
圧縮比のアップは言うまでもありません。

カムシャフト:
最大パワーの出方がどれも7,000rpm手前になっています。
皆さん上手にカムを選択されています。
一人だけピークが7,000回転を越える人がいます。彼だけが272度のカムを使っています。
その他の人はカムを交換されていても256度、264度のカムに抑えています。
マルハのカムも最高で264度の設定にしています。
今回のエントリーの中でもマルハカムを入れてくれている人は2人いました。
それ以外は他社製のカム。
ラインアップも豊富にある中でも敢えて抑え目なカムを選択されている辺りはまさしく市場の要求なのでしょうが、マルハ的には的を得た良い選択と思います。
勿論272度、288度、それ以上の物が必要ないと言うわけではありません。
市場の考え方とサーキットスペックの差が丁度この辺りなのです。

特に最近感じるのですが、制御が良くなればなるほど抑え目のカムでもパワーを引き出す事が可能になります。
いわゆるハイカムで8,000RPMを超える回転数まで一気にぶん回す事がどれほど過酷でハードな事なのか、良く理解して頂きたいものです。
本田のエンジンは誰が乗っても高回転まで回せるのですが、"アレは特別"などとは決して言いません。本田のエンジンだって昔は良く壊れました。
アルミブロックの開発を一つ取っても彼らは非常に苦労しているのです。
メーカーでさえ、最初は苦労して市場投入しているのです。 マツダはロードスター専用にエンジン開発をしていません。つまり流用。土台が高回転を意識していないのですから、そのベースエンジンで8,000RPM常用は非常に辛いと考えるのはマルハだけではないはず。 大抵のプロは同様な意見かと信じます。
一時的なパワーを求めても、一般市場では受け入れてもらえません。
ロングライフを前提としてストリートチューニングは施されるべきです。


NA8C/NB8C


型式 年式 走行距離 最大馬力 回転数 最大トルク 回転数 エンジンO/H暦 主要
NA8C-O 平成5年 83,250km 137PS 6670RPM 15.8kgm 5520RPM インテークパイプ
NA8C-Y 平成6年 94,000km 146PS 6800RPM 16.1kgm 5600RPM M2−1028
NA8C-OK 平成5年 83,000km 137PS 6620RPM 15.7kgm 4610RPM  
                 
NB8C-I 平成11年 16,500km 161PS 6680RPM 17.4kgm 5080RPM ファイン

2. NA8C
3台のエントリーの中で最もパワーの出ていたのがM2-1028でした。
過去他にも1028は何台か測定した事がありますが、大抵は150PS前半を記録します。
スムースな加速でフィーリングが良く、良く出来たエンジン(制御)と言えると思います。
限定車だけに大事に遊んで頂きたい車です。
さて、NA8Cはどれも無改造。ちょっとしたアイテムは装着されているのですが、
結果的には135PS超えと言ったところ。 最大パワーも6600RPMで発生。
サーキットではリズムも考えて7,000RPMシフトがベターか?
1028がソレより200RPM高いところでピークになっています。僅かなハイカムになっていますが、テスター上でもハッキリと現れています。
トルク的には16kg弱。チューニングされたB6と比べても僅かに劣る程度。
最初から83MMピストンが入っていますから、制御が上手くなされていればチョッとしたB6チューニングより速い事になります。
BPは排気量がある分、チューニングをしていくとそのメリットが大きく活かせます。
例えばヘッドチューニングだけでも(例:面研、ハイカム、キャブor4連インジェクション)マルハのメニューとしては170PSオーバー。場合によって180PS近くパワーを発揮します。
ヘッドのO/Hで40PSのアップはB6では正直チョッと難しい。
この辺りからも、ベース車として中古車を買うならNA8Cでしょうか?

3. NB8C
今回1台のみのNBモデル。
走行距離が延びていないにも拘わらず、既にエンジンO/H済み。
基本的なファインチューニングのみと言うことでしたが、結果は160PSオーバー。
お見事です。
実に綺麗な曲線を描いて立ち上がっています。
トルクも今回最大の17.4kg。
カタログスペックは145PS・6500RPM  16.6kg・5000RPM。
マルハでのテスターも大体同じ回転数で最大値を記録しています。

NBの素性も向上している上に恐らく面研などのキッチリしたO/H、そしてインテーク系をアルミパイプに換えていたりして吸気系を上手く処理しています。
NBはマニホールドの変更、スロットルボディ径の拡大、排気系の変更、等大幅に改良されています。
トルクが厚く、非常に乗りやすい仕上げになっています。
今回のパワーチェック大会などの企画でNA勢と比較するとNBの良さが目立つ格好になります。
私はNA系ファンなのですが、性能面はシッカリと認識しなくてはなりません。


さて、個々にもう少し突っ込んで紹介しましょう。
但し、これは次回に。

 

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