テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド クラッチの摩耗

クラッチの滑りは慣れているいる人はすぐに分かります。
エンジン回転を上げていても以前の様に車速がついてこない。
クラッチペダルの遊びがなくなった。
こんな時はクラッチの交換時期がきているのです。慣れていれば、極端な状態まで放置しなくて済みます。
滑りが始まっているにもかかわらず、そのまま乗り続けていると思わぬお土産がついてきてしまいます。
クラッチディスクのリベット(金属)が顔を出し始め、これらがフライホイールやクラッチカバーのフェースと当たり始めます。
こうなると、傷が深く入り 特にフライホイールの再使用が難しくなります。
社外軽量フライホイールを使われている方が多くいることと思います。出来れば長く使いたいところです。
つまらないことで傷めてしまうより、早期クラッチ交換が望まれます。

さて、ここで掲載する写真は交換されたディスクです。



右がクラッチカバー側、左がフライホイール側。
お気付きの点があると思います。
摩耗の具合が両面で異なるのです。
フライホイール側の方が早く摩耗しています。

動力伝達はクランクシャフトに固定されているフライホイールが回転をします。これにクラッチカバーで圧着されたディスクに伝達されてミッションへと繋がります。
発熱の観点からもフライホイール側の方が高温になることが分かっています。
MIDWAY INDUSTRIES社製のクラッチセットを当社も少し前まで販売していました。
当製品は現在でも北米で生産されています。価格が少し高いのですが、とにかく発想が良いです。
発熱の高いフライホイール側にはサーマルレジンを使ったフェーシング、クラッチカバー側はノンアスベストのフェーシング。
つまり一枚のディスクで両面異なった素材が貼られているのです。メタルディスクは摩擦に強いが操縦性が悪い、ノンアスは操縦性が良いが高温、摩擦に弱い。
これら双方の弱点を補った形になっています。
クラッチカバーの圧着スプリング部にはウエイトが取り付けられており、回転が速くなるにつれてウエイトに掛かる遠心力が大きくなりスプリングの圧着力をさらに高める役目をします。
つまりエンジン回転速度により圧着力を変化させることが出来るのです。
回転の遅い時はそれほど大きな圧着力は必要としないので純正程度のスプリングで充分な訳です。
これを強化クラッチタイプにすると常にスプリングが強い訳ですから、クラッチペダルの踏力(ドライバーの負担)も増す形になります。
当製品は北米でパテントを取得されています。
単純なアイディアなのですが、簡単には真似できません。

クラッチの構造自体は単純なのですが、奥が深く現在でも色々と悩むことシバシバ。
最も難しいのが、摩耗の均等性。これが本当に難しい。
クラッチをバラすと必ずフライホイールとの当たりを確認します。
当たり具合で今までの使い方がなんとなく見えてきます。
問題なのが摩耗に均等性がない場合、言い換えれば偏摩耗をしている場合があります。

ここで写真を掲載します。


写真はロードスターの物。強化タイプのクラッチです。
フライホイールの当たりを確認すると写真では分かり辛いですが、不均等さが確認出来ます。
なぜこんなことが起こってしまうのでしょうか?
不均等に摩耗しているのですから、クラッチの切れが悪かったり あるいはトルクがしっかり伝達できなかったりしていたのではないかと推測します。
クラッチ切れの悪さはミッションにダメージを大きく与えることになります。
伝達不足では強化クラッチにした意味が失われます。
このクラッチシステムは、フローティングプレートを介する本格的なクラッチシステムです。
フライホイールの歪みやディスクの歪みを見ましたが問題はないように思います。
ただ 写真からも分かる様に装着状態でディスクの隙間にシックネスゲージが多少なりとも入ってしまうのがお分かりいただけるでしょうか。
この時点ですでに圧着の不均等が発生しているのです。
製品化されてしまっているパーツの為、取り付けレベルで対策の施しようがありません。
しっかりした確実な組み付けに徹する以外方法がありません。

このテーマに関するテクアドは近々 その2を掲載いたします。
チョッと話が長くなりそうです。

[back]