テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド

個人的に“自動車工学”なる雑誌を毎月購読しております。

今回はたまたまロードスターを題材にして点火系のチューニングアイテムが紹介されていました。

大変に興味深い内容だったのでテクアドに掲載をすることにしました。

たまには皆さんも少し硬い内容の記事も読んでみてください。

尚、マルハとしては当アイテムのテストをまだしておりませんので、あくまでも雑誌記事としてご了解ください。

それではどうぞ!!

 





ノーマルの点火システムの70倍のエネルギーを発揮するという,米国B&M社のNew Volt(ニューボルト)の威力を試してみた。
テストに使用したのは,ユーノス(現:マツダ)・ロードスターとマツダ・ルーチェV6ターボ。
パッケージにはシングル/マルチコイル共用と書かれており,装着例として6気筒のダイレクトイグニション(直接点火)用の配線略図が示されている。
これは,車の12V電源を18Vと20Vに昇圧して,点火コイルの1.ターミナルにバッテリ電圧より高い電圧を印加する装置であることが,配線図から理解できる。
20V・15A(300W)を供給するユニットで,対象とする点火装置は純正のインダクテイブ(誘導式)点火システムのコイル電圧を昇圧させるもの。
国産乗用車には,現在ではほぼ100%がフルトランジスタ方式の点火システムが備えられ,デストリビュータを使わない直接点火方式が軽自動車にも使われている。
ストリビュータキャップ内にコンタクトブレーカとコンデンサが備えられたポイント方式は,10年ほど前から見かけなくなっている。
排出ガス対策に三元触媒が採用されたことも,点火系の信頼性と耐久性を向上させる必要性から,点火系改良の大きな目的といえる。
点火系のメインテナンスフリー化が進み,点火系のチューニングは点火プラグの交換以外は興味の対象ではなくなった傾向もあるが,点火プラグの寿命は中心電極と側方電極の両方にプラチナ(白金)チップが溶着された純正の白金プラグで10万kmとされている以外は,2万〜2万5000qでの交換が必要になる。
点火システムは,カムシャフトに設けられたシグナルジェネレータ(SG)とイグナイタユニットおよびコイルで構成される。
デストリビュータ方式では気筒数にかかわらず点火コイルは一つで,点火プラグの数だけの高圧ケーブルで配電されるが,デストリビュータレス方式では同時点火方式が多く,ニューボルトを試したユーノス・ロードスターのエンジンも出カコイルが2個備えられた同時点火方式だ。
直接点火方式は高圧コードがなく,点火プラグ1の直上にコイルが直接セットされている。
直接点火方式には,コイルのみでイグナイタアンプが別に置かれたものと,コイルとイグナイタが一体化されたものの2種類に分類される。
コイルとイグナイタが一体化された方式には3Pターミナルがつけられており,別体式は2Pターミナルなので,見分けられる。

 

基本配線図。


取り付ける車の点火コイルの配線(+線)さえ確認できれば、配線は三本だけで完了する。

 


ニューボルトは,点火コイルに12Vを加えるラインに18&20Vの出力を割り込ませて,点火コイルの+側に18&20Vを常時供給するシステム。
配線はこの種のシステムとしてはきわめて少なく,アース以外の赤と橦色の2本を接続するだけ二点火コイル+−のうち,+線をカットして電源側にニューボルトの赤線を接続し,橦色の出力線を点火コイルの+側につなぐ。
あとは,アース線をボデーアースさせれば,作動する。
ニューボルト本体は任意の位置に固定するが,防水構造にされているものの電子システムなので,高温になりにくい場所に設置するように,説明書には指示されている。ユーノス・ロードスターの同時点火用ハーネスはエンジン後方に3Pコネクタがあるので,ここに接続した。
同型の防水カプラがあれば,この3本のうちの1本が電源なので(十12VがキーONできている),ここに赤と橦線をつなげば,取付け完了。
電源が入ると,ニューボル.ト本体の布色のパイロットランプが点灯する。
点灯しなければ,アース不良か電源と出力の配線が逆に接続されていることが原因と考えられる。

パワーを求めてエンジンチューニングを進めると,シリンダ内圧の上昇や燃料の増加などで点火する条件が非常に厳しくなり,ノーマルの点火システムでは失火しやすい状況になる。
これでは,せっかくのエンジンパワーをロスしてしまう。
ニューボルトは,ノーマルエンジンをはじめチューニングエンジンも確実に点火させることで,潜在パワーを最大限に引き出してくれるものだ。
その特徴は,インダクテイブ点火システムのコイルの電力およびエネルギーの増幅作用を,マイクロプロセッサ制御で点火プラグがエンジンの出力によって必要とする最大限のエネルギーを供給するもの。
冷間時のエンジンをクランキングすると、150〜200Aの電流がバッテリから放電され,満充電12.6Vのバッテリでも3秒のクランキングで10V以下,5秒だと8Vまで低下するので,点火コイルの電圧もこれ以下になりやすく,初爆を呼ぶためのエネルギーは低下する。
冬期にはクランキングに5〜8秒かかることもあるが,ニューボルトは点火コイルに20Vを供給するので,始動性改善効果としてもすばやい始動が可能になる。
始動性・高回転・高過給という点火プラグの要求電圧が高くなって失火(または着火ミス)しやすい状態でも,失火を防いでくれる。
ニューボルト本体に入れられたマイクロプロセッサが放電状態を1秒間に10万回チェックして点火コイルヘの供給電圧を制御するので,必要に応
じて電力をバリアブルに供給できる。放電時間も長くなるため,競技車両にはCDIよりも適している。
潟Gイチ・ピー・アイによる日本仕様は,シングルコイル(デストリビユータ用)の点火パーツに負担がかかりやすいタイプのエンジン用に,2種類のループ線の切断によって出力電圧が20V/18V/ノーマル電圧の3段階に切り換えられるように進化されている。切換えは,茶色か青色のループ線をカットして行なう。

ユーノス・ロードスターは吸排気系のみのチューニングだが,始動時から排気音が変化し,アイドリング時から音量が増加した感じだ。
発進加速も,1〜2速でホイールスピンが発生して,中低速トルクの向上が体感できた。
シングルコイル・デストリビュータ式のマツダ・ルーチェは始動時の初爆音が低くなり,ファストアイドル時問も短くなった。O→100km/hの加速タイ.ムはO.8秒も短縮。
それはシャシダイナモメータの計測による2800〜3900rpmあたりで出力が最大22PSの向上したことと,最高出力が前回より約10PS向上の139PSとなったことにも現われている。

 
発売元:(株)エイチ・ピー・アイ TEL:03-5663-2551


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