テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド  ミッショントラブル

ミッションのトラブルは案外に多い。
クラッチの切れの悪さ、無理なシフト、オイル管理の悪さ、高回転域の多用、エンジンパワーのアップ、これらが原因となります。

ロードスターの場合、あまり壊れることはありませんが、サーキット走行を繰り返しているとやっぱりダメージの可能性は大きいようです。

どうもクラッチ切れの悪さが大きく関与しているように思えます。
特に社外の強化クラッチの設定が悪く、シフトが上手く出来ないことがあります。
実のところ、マルハTAMIYAロードスター(NA1600レース)もクラッチトラブルを最初の時期に抱えていました。最初は原因がわからず、何回ミッションを降ろしたか分かりません。
やっと分かったのがリリースストロークの設定の悪さ。
簡単なことですが、実に難しい。 何故なら、最初は問題なくシフトが可能、車上点検ではまったく問題が見られないのです。 
ところが、レースの終盤でクラッチの入りが突然悪くなる。 5速全開の高速からシフトダウン。ところが低速ギヤの入りが悪い。
直ぐに工場でばらして シンクロを確認、交換もしてみた。 気になるのがクラッチディスクの偏摩耗。4枚羽のそれぞれに僅かに片減りが見られる。そしてリリースベアリングの
損傷。

実はクラッチが切れすぎていたのです。
僅かにストロークが過大で、プレッシャープレートを必要以上に押し過ぎていたのです。

先日はユーザーがクラッチ切れの悪さで相談にやってきました。
ディーラーで交換をしたそうで、パーツは強化クラッチを通販で安く購入。
(マルハのクラッチキットも負けないくらい安いぞ!! と ここで宣伝)

ところがギヤがカジル、クラッチペダルを一杯に踏み込むとやっと切れる。ペダルを少しでも戻すと ギヤが入らなくなる。
クラッチを交換した とたんにこうなったと言う。
本人には気の毒だが、とにかくミッションを降ろした。ディスクも確認したが、外見上は悪そうに見えない。 ただ、一箇所のみ気になる点があった。
製造会社も販売元も分かっているので、ユーザーから通販業者を通じて確認を取ってもらったが、
"異常ない"  との返答が帰ってきた。
当社が販売したパーツではないので マルハから強く問い合わせる訳にもいかず、本人の考えに任せる形になった。 ただ、現実にクラッチシステムに問題があったからこそトラブルが発生している訳です。 マルハではこの件はもう少し追求してみます。

ご本人は最初に当然 組み上げたディーラーにも確認に行ったそうで、そこではクラッチペダルの部分でストローク調整も施した、(普通はそんなことはする必要がない。)リリースホークも新品に交換していると説明していたそうです。このパーツだって、普通は再使用です。
要するにこれ以上は"やれない"状態。

マルハでの作業は結局 本人の希望で他のクラッチを装着、一発で問題解消。やはりクラッチに原因があったと考える。

さて、今度はスバルインプレッサの例です。
シフトチェンジの悪さで入庫。
入りも悪いし、抜けも悪い。
クラッチの切れの悪さでこの様な症状は発生するが、実は少し前にクラッチは当社で交換済み。こんなに早期にイカレルのはチョッと考え辛い。
やはり、ミッション側がトラブッていると判断。 バラシに はいる。

インプレッサのミッションは降ろすのは少し苦労しますが、分解そのものはロードスターと比べると比較的 楽 です。 
まさしくポルシェのコピーと言える位に似ている。
徹底的に研究して、自社の車造りの参考にしたのでしょうね。

さて、問題の中身ですが、写真をどうぞ


分かり易いでしょ。 
バラシた後でもこうやって形になっています。
シャフトを手で回せば駆動の様子も分かります。 
シフトフォークのレバーが一部掛けていました。
写真の矢印矢印は もともとは一体です。
このフォークが折れてシフトの入りが悪くなったのか、シフトの入りが悪くて無理に力をいれたのでフォークが折れたのかは、鶏と卵の関係と同様 判断出来ませんが、クラッチ切れは慎重にならなくてはなりません。
実際にディスクのアタリを確認すると、やはり少し偏摩耗が見られます。

ここは慎重にディスク、カバーともメーカーにクレームして新品に交換。
修理完了後はスコスコとシフトチェンジが可能。
ユーザーに事情を説明してお返ししました。

ミッショントラブルは、通常の乗用車では殆ど100%近くありません。要するに普通に日常的に乗っているうちは強度は充分確保されています。
これが、ターボパワーやサーキット走行、スポーツドライブを始めると、とたんにトラブルがチラチラと顔を出し始める。

やはり、バランス は取れていることが大切であり、車で遊ぶ時は多少なりともリスクを覚悟する、そして早めのメンテナンス。
チョッとおかしいなァと思ったら、日頃から付き合っているプロショップに相談されるのが一番。 

なかなか壊れないのが車であり、簡単に壊れるのも車である。

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