テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド  整備性

トリャーッ!!
オリャーッ!!

気合いを入れて臨んだ富士チャンピオンレース第7戦(最終戦)。
11月17日土曜日 予選
11月18日日曜日 決勝

ドオオオリャー!!!

メンテの俺が意気込んでもしょうがないのだが、自然と気合い一発、鼻から猛烈 フン!!

木曜日からFISCOに乗り込んでセッティング。
金曜日も少し走りこんでセッティング。
土曜日もかるーくセッティング。????

ではなく、土曜日は本番でした。
FCRキャブとラム圧を取り込んで如何に最高速に乗せるか、これが勝つ秘訣。
5速・9000RPMオーバーの異常なバトル。

ドライバーに“そんなにスピード出して怖くない?”と聞けば、
橋本誠、曰く“怖くない。 壊れなければ。”

“ロードスターで5速9000回転オーバーってどんな感じ?”と聞けば
“別に普通、 でもエンジンちぎれそう・・”


最初のころは走り終わるとオイルがボタボタ、クーラントがビチャビチャ、
それでもって、ネジが家出。

極限での振動でタリバン崩壊状態。

去年からはエンジンの安定性が飛躍的に向上。
各部の見直し、設計変更、軽量化、振動対策、剛性アップ、出力アップ。
タイムは伸びるし、バトルも制する。

ところが〜。
今回キャブが合わない。
なんだか分からないが合わない。
多分コイツ(FCR)から嫌われた。

丁寧にメンテして、データー収集。 
プログラム(点火系)も少々変更して何とかそれなりに。

ところが〜、ところが〜、
大事な予選でタイムが伸びない。
44秒台を入れてくる他チーム。
46秒台で悪戦中のナイトマーマルハ。

“どうしちゃったのさ、??”と後でドライバーに聞けば、
“コーナークリップ手前でラインから外れる。舵角が大きく、タイムに繋がらない。”
“肝心のエンジンは?”
“いつもの様に回っている、気持ち的には体感タイムは44秒台楽勝、実タイムは悪夢のようだ。”っと語る彼。
土曜日は持ち出し許可を取り、マルハ第二工場で夕方からサスペンションを全バラ。
ピロのアタリ、バネのしなり、ダンパーの手ごたえ、各部のチェック、車高調整、
アライメントの取り直し。

何故ここまでやるか?
これが単なるドライバーの<乗れていない>心理的なものであれば必要の無いメンテになるのだが、フロントタイヤの摩耗の仕方がいつもの物ではなかった。
明らかにドライバーの言わんとしているコーナーフィールを物語っていた。

だから、徹底してチェック。
そして最終セッティングをようやく夜遅くに終えて いざ決勝。

ところが〜、ところが〜、ところが〜。
一周目2番手キープのままダンロップコーナー進入。痛恨のスピン。

原因不明。
ピットに入ってくるマルハロードスター。
スタッフ全員“信じられない。”と言ったオモーイ雰囲気。
俺自身も今にも泣きそうなほどショック。
ジャッキアップで再点検。
未だに原因つかめぬが、シーズンオフにジックリやりましょう。

長いノッケでしたが、詳しいレポートは後日のレースレポートで報告しましょう。
(まだ、レポート別にやるのか? by 読者)

あっけ無く終ったレースほど書く事が一杯あるのだ。
レースのフラストはHPで晴らします。 すこし位は読者も付き合え。

さて、今回のテーマは整備性。
レースカーを作成する前に各パーツの機能性を考えて特注オーダーをパーツメーカーに
入れたり、旋盤で引いたりするのですが、同時に考えなくてはならないのは整備性。
レースカーは必ず壊れるし、壊れなくてもメンテは必要。

なるべくスッキリした形状、レイアウトが必要です。
バンパーも低くて積載車では傷めるので、その都度外します。
だから純正に比べて簡単に取り外しが出来るようにしてあります。
キャブレターも比較的簡単に取れます。
インダンクションボックス、サスペンション、排気管、それぞれ簡単に取り外せるように
工夫されています。
エンジンも完全状態から40分で降ろせます。

整備性が何故大事かといえば、簡単に外せるものほどシッカリと管理できるからです。
整備には時間の制約があります。
これは一般車両も同じ事です。

修理に時間が掛かれば、その分工賃に反映されます。
クラッチ交換の際にエンジンと一緒に降ろすような4WDとロードスターの工賃が一緒のはずがありません。

整備講習会などの折に各メーカーのメカニックと話しをすると自分の所の車は日頃より慣れている為、あまり気にならない様でもあるが、自分のメーカーの物でも絶対触りたくない車は必ずあるそうです。
そんな車はみんなで なすり合い だそうです。
オーナーも見ているかもしれないので具体的な名称は避けます。



(ハイ、ワンタッチ)
         

写真のエアクリーナーはトヨタのプログレ。
見事なデタッチャブル方式。 ワンタッチ感覚。
トヨタ車の整備性は他メーカーと比べてもかなり良いと言えます。
勿論車種別ですが、一般的にはエンジンのレイアウトは良く考えられています。
セリカ4WDのレイアウトは強烈ですが。
(ターボチャージャー外すだけでも呆れるくらい大変、クラッチは完璧エンジン降ろし)

 



    
これは同じプログレのファンベルトオートテンショナーの写真。
ロードスターのような調整式テンショナーではありません。
さらに、長い1本のベルトで全てをまかないます。
テンショナーの目盛りでベルトの延び具合が判断出来ます。
調整不要、交換時期目盛り表示。 どうです。
オートテンショナーをトヨタはかなり前から採用しています。
海外輸入車にも多く使われています。

分からないのがホンダ。
Aを外すのにBもCもDも外す羽目に良くなる。
例えばファンベルトがミッションマウントにまたがっている。
だから、ベルト交換でマウントを外さなければならない。
こんな物は序の口で、ホンダのエンジニアはスペースがあればどうにか押し込むのがお好きなようだ。

レースカーそのものの様に良く回るエンジンには脱帽。
一方で個人的にはイマイチ好きになれない原因は整備性や全体的なバランスを含めた総合評価が俺の中では低い為であろうか。

トヨタをベタ誉めする気はサラサラないが、まとめ方は流石である。
室内の高級感も素材の割には上手くまとめる。
エンジン制御やAT制御もきめ細かくないが壊れず上手くまとめる。
外観デザインも非常に上手くまとめる。
余った金で次世代の車も上手くまとめる。
言わばまとめ上手なのだろう。

こういったまとめ上手には必ず整備性も向上しているのだ。
整備性の向上は全国ディーラーの作業時間を短縮可能にさせる。
回転率の良い整備工場であれば客は満足するし、収益も上がる。
アフターマーケットの戦略にも大きな効果が期待できる訳である。

今の時代、プラグ交換だけでも汗かく車がある。
メーカーは申し訳なさそうに白金プラグを採用して交換時期を長くした。
でもさ、交換時期が長いから確認もしなくても良いと言うことにはならない。
もし、焼け方にバラつきがあれば他を見なくてはならない。
なぜならば、燃焼状態を最も正確に反映しているパーツはプラグなのだから。
レースエンジンでも、一般エンジンでもプラグの確認は当然するべき作業なのです。

だから、整備性はどんなに車が発達しても、あるいは壊れなくなっても大事なのです。

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