テクニカルアドバイス
For Roadster

テクアド デフマウント

12月は毎年バタバタもんで、何から先に手をつけたら良いのか分からないほど混雑する。
兎に角、普段の電話や会話なんかがでたらめになるから笑える。

先日は私自信がパーツを配達してくれた部品屋さんに

“どうも ご苦労さん”っと言うところを

“どうも ご馳走様”っと訳分からん挨拶をかましてしまった。

相手はゲラゲラ笑って帰っていった。 もうあそこからは部品買わんっと心に誓った。
ウチの番頭は朝掛かってきた電話に 

“ おはようございます。 いつもお世話になります。”

っと言うべきところを 

“どうも、 いつも おはようございます。”

っと最高のかましをやってくれた。
全員爆笑である。 本人もニヤ けてしまって電話にならない。
このフレーズは仕事中に思い出してしまうと、何回でも笑えるから不思議である。

この時期は兎に角工場の作業分があまりにもハードな為、電話が大変厄介になる。
電話が来ないと仕事にならんのだから、贅沢な悩みでもあるのだが、それにしても一度手を止めると、
どうしても次にペースを持っていくまでが時間が掛かる。
やはり仕事は集中力なのであろう。


さて、今回はデフマウントについて考察。

  

写真の部品はスズキカプチーノのデフマウントである。
ロードスターと似て非なる部分はこのマウント部がデフ本体とセパレートされている点である。
カプチーノは良く出来た車で、乗ると分かるが大変楽しい車である。
足回りもかなりついてくるし、エンジンパワーも軽自動車としては十分なものである。
チョッと余談だが、このカプチーノのユニットがニュージーランドのFraser Clubman FC-4 (フレイザー クラブマン)に搭載されているのだが、評判も中々のものらしい。
フレイザークラブマンは大阪のゴールドオート社が輸入しているものであるが、ニアセブンといえども完成度や価格は評価にあたいするもので、因みにFC-4は200万円を切るプライスが付けられている。
正統派と称するケータハム(紀和商会社輸入)が“本物”と世間では謳われているが、車を楽しむ事に関して言えば、この手の車は皆楽しい事は言うまでも無い。
チャップマンが亡き今、このセブンを正統派、非正統派と区別する事はどうかとも思うが(理由は どれもロータスではないのであるから)、
価格と市場の人気は関数的比例に順ずるところは車でも他コレクションでも同様であるから仕方が無いことである。



カプチーノのマウントブッシュが完全に飛んでいることがお分かりと思う。
代替の新品ブッシュを注文。 ところが、

“マウントのみの設定はありません、サポートとアッセンブリーになります。 ”

と信じられない回答が帰ってくる。
“値段は?”と聞けば、“20,000円は超える”
これは痛い出費だ。“かわいそうー”と若いオーナーを思い浮かべてしまった。

マウント単品の設定が無いのは驚きであるが、スズキに関して言えば、他車種でもよくあることではある。
純正フォグランプのレンズが割れても、左右セットのアッセンブリーでしか対応が出来ないとか、
そんな事はこの会社では当たり前なのかも知れない。
部番を細かく割り振って最小限の単位で在庫管理をしてくれれば、ユーザーにとってこんなにありがたいことは無いのであるが、
メーカーとしては棚の用意、在庫の増大、手間、色々と厄介になるのだからして、ある程度の塊で在庫を管理したいのが本音であろう。
それにしても、消耗部品は単品扱いをするべきである。
さらには、この車のフロントボールジョント部ブーツを頼んだ所、これも単品設定が無い。 
ボールジョイントアッセンブリ−でないとこの僅かなブーツすら入手できないのである。 
全くお粗末な話である。
K―No1と自称する根拠は販売台数から来る物であろうが、アフターケアをもう少し充実させて欲しい気がしてならない。

ロードスターのデフマウント交換は過去に何台やったか検討もつかないが、わりと大変な作業である事に違いは無い。
マルハでは独特の方法で交換を行うのであるが、この辺のコツを知らない一般工場ではさぞかし苦労する事であると考える。
なんにしても、マウント交換となればデフアッセンブリ−を車体から外さなくてはならいロードスターと対象にカプチーノはこの部分のみが外れるので、作業性は良い事になる。

サポートはロードスターが上から吊る形を取るのに対し、カプチーノは下から支える形になっている。

 

上からか下からかはさほどの問題ではなさそうであるが、ロードスターのようにPPFにて一部を固定するのと、
リアメンバーにシッカリ固定する通常のタイプとではだいぶ振動やトラクションの掛かり方に差がでるように思える。
無論、マツダは画期的PPFを効果があるから採用しているのだが、実際にはどうも疑問が残る。
エンジンマウントがちぎれる現象がロードスターは非常に多い。
これはねじれがエンジンマウントに大きく負担となるためであるが、もし、通常のミッションマウントがロードスターにも採用されていたら、これほどにはエンジンマウントには負担は掛からないはずである。
それほどねじれているのに、エンジンのトルクを本当にリニアにデフまで伝えているのであろうか?



エンジン+ミッション+PPF+デフの大1きな塊をエンジンマウント(2ヶ)でマウント(2ヶ)(赤矢印部)で支ええるのは少し無理があるように思える。
その場の設計上力学ではOKかもしれないが、耐久性は非常に疑問が残る。事実これほどエンジンマウントがちぎれる車はそうザラには無い。
しかもNA120PS〜130PS程度の出力エンジンである。

レースカー用に設定されていたマツダスピード製N2マウントは今や廃盤になってしまったが、このフィーリングに近づける為に、マルハではアルミのスペーサーを作って挟み込んでいる。
強化デフマントは頻繁に打ち変えをしているが、レース用にはさらに堅牢なマウントが欲しい。 
そこでアルミスペーサーの考案を試みた。
結果は上々でやはりトラクションの掛かりも良いのであるが、少し過激にも思える仕様なので、ラインアップとしては設定を控えている。
デフ単体を車体に固定したままPPFを外すとデフフランジ部が頭を下げる格好になる。
この時、純正の軟らかいマウントであるとかなり“ガック”と下がるのに対し、強化マウントは良くした物で、その度合いが少ない。
ここにアルミスペーサーをさらに追加、まるで固定されているかのごとく、ガチガチである。

今回はカプチーノから少し考えさせられた点がもう一つ。
それはサポートとデフ本体の位置関係。
ロードスターはデフケース(つまりデフの後方)から吊っている。カプチーノはデフ本体中央にサポートが入る。
つまり、デフの重心部でサポートするのか、端からサポートするのかの違いになるが、これは極めて大きな相違点である。
例えば、ロードスターのアルミケースはケーシングのみに専念させてその分容量を稼いでもらう。
デフ本体(キャリア)にサポートが固定できるようにネジ穴を追加して、サポートがカプチーノの様にキャリアの中央で固定される。
こんな図式でデフをマウントすればもっとPPFが効果的になるように思えて仕方無い。
その都度の流用で新型を作らねばならない“事情”があるだろうが、なんとなくバランスが悪いロードスターのPPFとデフの関係はどのプロショップでも感じていることではないだろうか?

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