カーエアコンの考察

連日の狂った様な猛暑で、梅雨どころではありません。
オープンエアのロードスタ−も、幌全開では日射病の餌食に成りかねません。
こうなると快適なエアコンが必要なのですが、さてエアコン全開のはずが、何故か熱風が吹き出すありま様。
それって、オレオレと皆が言うほど、エアコンのトラブルは多いのです。
そこに来て、冷却媒体の問題も絡み、環境的な配慮の上で修理されるべきデリケートな問題でもあります。
今回は、マルハのDrMがエアコンについて、解説をいたします。
先ずは、メカニズムも含め、エアコンについて皆で考えて見ましょう。


いよいよ夏本番 暑い季節がやってまいります。
サーキット、ジムカーナー等は車の負担も大きく、モータースポーツも夏休みの方が多くなってきます。
この時期特に整備依頼が急増するのがエアコンのメンテナス世間では、マルハはハードなエンジンチューンばかりが業務と考えていらっしゃるようですが、一般の整備も数多く作業しております。
今回はちょうど旬ですので、エアコンについてレポートしたいと思います。

先ずは、原理から。
皮膚にアルコールを塗布すると涼しく感じ、また、庭に打ち水をすると涼しく感じるすなわちアルコールや水が蒸発するときに周囲から潜熱を奪う、その自然現象を利用しています。
と整備所や参考書にはお約束のように必ず載っています。
気化熱の利用ですね。

次にカーエアコンの冷凍サイクルを簡単に説明しましょう。

先ずはエンジンルーム側から、

コンプレッサー: 
冷媒を圧縮し、高温高圧の気体にします。

コンデンサー:
通常はラジエターの前に付けています。ロードスターも同じです。
圧縮された気体の冷媒がここを通過する際に冷却されて液体になります。

レシーバー:
サイトグラスが着いており中の気泡でガスの量を簡易に判断する所で、
コンデンサーで液化した冷媒を一時貯えたり、冷凍サイクル中のゴミや水分を除去するようストレイナーと乾燥剤が封入されています。
ここまでがエンジンルーム内に設置され、皆さん実際に御覧になることができます。

次は室内のユニットの内部です。

エキスパッションバルブ:
高温・高圧の液冷媒を小さな孔から噴射させることにより、急激に膨張させ低温・低圧の
霧状の冷媒にする切っ掛けとなるバルブです。
バルブとの名の如く冷媒量の調整をに担います。

エバポレーター:
低温・低圧にされた霧状冷媒はエバポレーター内で多量に気化することによって、エバポレーター自身が低温状態になります。
ここをファンから送られた風が通り車内を冷房や除湿をします。
と、こんな仕組みです。

続いて冷媒のお話
従来カーエアコンではフロン系の一種であるCFC12(R12)を用いてきましたが、
オゾン層破壊でいまや世界中の敵 1996年モントリオール会議で全廃する旨に決定し、いまや入手困難の貴重品になりました。
これが困ったことに我らがロードスターにおいては、R12フロン使用年式の生存率が非常に高い。
NA6CEモデルはほとんどR12仕様だったと記憶しています。
また、ポルシェやメルセデスなど外車もR12仕様が現役で多く生存しています。
趣味性の強い、言い換えれば面白い車は長くユーザーに可愛がられると言うことでしょう。
現代主流はHFC−134a 通称R134a。
オゾン層破壊の影響が少ない代わりに、地球温暖化の原因になると言われています。
不燃、無毒性で安全である事や、製造容易で低コストなどの理由から使用されています。
一方で欠点も幾つか見られます。
冷媒はエアコンシステム内を毎分6回も巡回し、高温、高圧の液体から低温、低圧の気体までのサイクルを5回も変化します。
元々R134aはR12に比べ多く水分を含んでいる上に、使用する潤滑油と共に吸水性が大きく また、過酷な使用状況では化学変化も早く、酸化が進み不凝縮ガス水分等不純物発生も多いようです。
R12に比べ高圧側の圧力は多少高くなり、コンプレッサーの消費電力も7%ほど大きくコンデンサーの放熱量も増加する。
マルハ流に簡単に言えば圧力が高いという事はガスリークのトラブルも多い。
冷媒の劣化も早い。
したがって、定期的なメンテナンスが必要という事です。
R12仕様車は、レトロフィットと言われていますR134a仕様に変換する方法があります。
ヤナセでは旧メルセデスに推奨しています。
作業内容は、コンプレッサーを取り外しオイルの交換、構成部品の取替え料金は3〜4万円位と言われています。

キット内容はR134a用のサービスバルブ、 高・低圧レシーバータンク、Oリング 数個 (一式全部では無い) R134a専用オイル表示ラベル とこのような内容です。

問題はR12とR134aのオイルがまったくの共通性が無いと言うこと。
混ざると最悪コンプレッサーの焼きつきを起こす要因にもなります。
また、成分の違いからゴム類の劣化、Oリングからのガス漏れなどのトラブルを起こすと言われています。

しかし、マルハでは内容に疑問も有り作業を行いません。
本当にコンプレッサー内のオイル交換だけで良いのか?
コンデンサーやユニット内部の残留分の旧オイルはどうするのか?
各部品連結部はすべて0リングを使用しているが全部交換しなくても良いのか?
一部車種によっては新車時からR134a対応のOリングが装着されているものも有りますが、この様に幾つもの問題が納得出来ないからです。
最近はR12対策用代替フロンも数社より発売されています。



代表例としては、R134a+添加剤のパターンが多く、又はR22aを使用した物もあると聞いています。
安易にエアコンの効きが悪いからと代替フロンで補充を済まし、結果的にコンプレッサの焼き付きや、Oリングからのガス漏れなどのトラブルは数多く聞いています。

また、大事なのは作業内容の表示。
オーナーや整備工場が変った後に、誰も作業内容が確認出来ない状況があります。
この様な表示の怠りは後々の作業に大きな影響を与えます。
それではR12仕様のオーナーはどうすれば良いのでしょうか?
そんな声が聞こえてきそうです。
お任せ下さい。
マルハではこの夏 暑いと苦しむロードスターユーザーの要望に応えたく、R12フロンガスの入手に努力致しました。

最後にメンテナンス編
まずはベルトの損傷や張り具合の基本点検を忘れてはいけません。
また、ラジエターやA/Cのクーリングファンの不良。 任意でON/OFFできるリレーなど追加したアフター部品の不良で実際ファンが回っていない車両もありました。
エアコンの作動不良には制御系と冷凍サイクルの不良(作動圧力の不良・ガス漏れ)などに大まかに分けることができます。
最も多いトラブルがガス漏れでしょう。

ガス量の簡単な判断はレシーバータンクのサイトグラスを見てください。

ガス漏れの場所は潤滑のオイルも共にリークしている為、オイルで汚れているケースが多くリークポイントの判断の材料にすると良いでしょう。
この辺は一般ユーザーにも判断しやすい材料だと思います。
と偉そうに言いましても実は、我々プロでもリークポイントの判断に困る事もしばしば。
ガスリークテスターに反応する位の漏れ量ですと良いのですが、一年間に極僅かの減少ではもうお手上げ。
ところが最近では蛍光剤を注入しオイルと混ぜ込み、UVライトを使用してリークポイントを診断する画期的な方法ができました。
トレーサーラインと言いますが当社も大変お世話になっています。
補充に関しても注意点があります。

R12aは多少の過充填でも良かったのですが、R134aではサイトグラスの泡の量での判断が難しくなりました。
したがって最近ではサイトグラスが無い車種もあります。
R134aでは高圧がR12aと比べ高い為、過充填しますとコンプレッサーの回りが重くなります。
したがってベルトの滑りが発生したり、保護回路のプレッシャースイッチが働きシステムが作動しない事もあります。
また稼動しても冷えがかえって悪いと言う事もあります。
補充はゲージマニホールドを使用し、高圧・低圧のメーターをチェックしながら注意して行わなければなりません。
ただ、ガス量が少ないからと安易に補充で済ませないで下さい。
フロンガスはR12a R134a両方環境に大きく影響します。
費用などの問題もありますが、可能であればきちんと漏れ場所を整備してからガスの充填をして下さい。
仕方なく、補充で済ませたい場合もガス残量にもよりますが一度古いガスを回収し、真空引きでのガス充填をお奨めします。
真空引きをせずにサイクル内に水分を残すとその量が僅かでも、エキスパッションバルブの小孔内で凍結し目つまりを起こす。
またコンプレッサーのバルブを発錆させたりしてトラブルの原因にもなるからです。
したがってサイクル内を真空引きする事で水分を蒸発させる事が重要になってきますし、R134aでは適量充填の判断にもなります。
レシーバーも同時交換ならより効果的でしょう。
当然オイルも減少していますから添加剤などの補充もお奨め、コンプレッサーの回りが軽くなり異音も減少するかもしれません。



てな訳でこの夏、マルハではお得なAC整備メニューをセットいたします。

 

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