マルハ LSD講座 その1

セットパーツやデフコンの企画でお求め易くなっておりますマルハLSDですが、企画の根本にはLSD単価の値下げがあります。
順調な販売実績に伴い増産体制に入る事が出来ました。
皆様への還元のため、単品単価の値下げで頑張っております。

【 マルハLSD 大幅値下げとセットパーツの推奨 】


NA6CE用についてはサイドフランジが別途必要になります。
既にマツダS製及び他社製LSD御利用の方(除くクスコ社)はお使いのサイドフランジが再使用出来ます。
必要となるサイドフランジはNA6CE・ロードスターのAT車用のもので、オープンデフ用のものです。
5MTはビスカスLSD標準となっていますが、左右のフランジ形状が異なり、当社のLSDには適合できません。
NA8、NB用のLSDは標準のサイドフランジやドライブシャフトがそのままお使い頂けます。
LSD装着にはNA6のサイドフランジのみならず、サイドベアリングやオイルシール(同時交換推奨品)等の純正部品が別途必要になります。
単品販売も致しますが、セットパーツでのご購入が手間要らずの上、確実です。
また、お得な価格に設定されておりますので、どうぞ御利用ください。

【 LSDの基本講座 】

はじめに

機械式LSDと標準LSD(ビスカス&トルセン)とは構造的に全く異なるLSDであるために、その特徴や性能も異なります。
また、一般(オープン)デフとの比較ではトルク伝達上の性能は圧倒的な違いがあり、この違いは走行性、登坂性、走破性、等車の推進力に大きく影響します。

より面白くロードスターをドライブする為に機械式LSDを推奨するもので、サーキットアタックはもとより、ドリフトや峠において、その効果を期待するものです。
代償としてチャタリング(バキバキ音)が発生しますが、基本的に出にくいイニシャル設定の他、オイルや添加剤などの工夫で低減させる事が出来ます。
ただし、あくまでもある程度のチャタリングは発生します。 ご理解の上、ご使用ください。
LSDのメリット

一般(オープン)デフの構造

デフの内部は以下の通りの構成となっています。

直進状態

左右駆動軸に回転速度差は生じないので、左右サイドギヤは同一回転となる。
従い、左右サイドギヤに挟まれるピニオンギヤも回転しない。
例:
デフ入力回転(ファイナル・ピニオンギヤ) 100rpmの時
右駆動輪 : 100rpm
左駆動輪 : 100rpm

旋回状態

ここでは右旋回を例としています。
右駆動輪が内輪(遅い回転数)、左駆動輪が外輪(速い回転数)となりスムースな旋回となる。
実際の働きとしては、右駆動輪(内輪)は路面から車輪の回転を下げようとする抵抗を受けるので、デフ内部の動きは

右で遅れた分を左に加速する働きを行い、左右駆動輪に回転速度差を与えながら駆動力を伝達するのです。

つまり、左右駆動輪の回転速度差は、抵抗の大きい側の車輪を基準に自動的にバランス調整され、スムースな旋回が出来る。 この動きをデフの"差動・(作動ではない)"と言います。

例:
デフ入力回転(ファイナル・ピニオンギヤ) 100rpmの時
右駆動輪 : 70rpm
左駆動輪 : 130rpm

オープンデフの欠点

例: 脱輪時にぬかるみから脱出ができない。
駆動輪の片輪が脱出域にぬかるみに入った場合、その車輪の抵抗はゼロになり、逆に接地している駆動輪には全抵抗が掛かっている事になる。
このケースを前述の"差動"に当てはめると、

となります。つまり接地側の駆動輪にはトルクが伝達されず、車は動かないのです。

例:ハードな旋回時に駆動力が得られない。
モータースポーツ等でハードな旋回をする場合、作用する遠心力によって車体が傾き内輪が浮き気味となり、接地荷重(抵抗)が減少する事があります。
この場合、先の脱輪状態と同様な状態になり、浮き気味の駆動輪に駆動力が集中することになります。
その間一時的に車の推進力が得られず失速してしまいます。

通常走行時でも、車輌状態(荷重変化やタイヤのグリップ)や路面状態(凹凸、抵抗、水溜り、砂などの摩擦係数の変化)の影響を受けて左右駆動輪の駆動力はめまぐるしく変化し、バランスを取っているのです。
つまり、少なからず駆動力の損失をしている事になります。

この様なオープンデフの欠点「抵抗の小さい側の駆動輪に駆動力が集中してしまうこと」を補う為にLSDは必要とされています。
出来るだけ駆動力を無駄なく使い、推進力を高める装置なのです。

マルハ機械式(多板式)LSDの構造

デフケース内の構造は約25点の部品で構成されています。


ピニオンはピニオン十字軸を回転軸として,サイドギヤはピニオンに噛み合うべくそれぞれ組み立てられます。
デフケース内側にはキー勘合し、軸方向に可動なプレッシャーリングがあり、プレッシャーリングの片面には十文字にV字状の溝があります。
左右プレッシャーリングのV字溝でピニオン十字軸を挟みこむ。
従って、ピニオン十字軸はフロート状態にあり、デフケースとは直結していません。

*オープンデフでは、ピニオン十字軸はデフケースに串刺し状態(直結)である。

左右プレッシャーリングとデフケース内側面の間にはデフケースの内側にキー勘合するクラッチプレート(ドライブ・外ツメ)と、左右サイドギヤにキー勘合するクラッチプレート(ドリブン・内ツメ)が交互に配列配置されています。


LSDの起動

アクセルONで駆動力がLSDに入力されると、デフケースと一体回転するプレッシャーリングは回転しようとします。
一方、車軸は慣性力により現状維持し続けようとします。
この両方の力が衝突するポイントは、フローとしているピニオン十字軸とプレッシャーリングのV字溝の部分です。

当初、ピニオン十字軸はV字溝の中央に納まっていますが、駆動力が作用するV字溝と慣性力が作用するピニオン十字字軸との間にはズレが生じ、クサビ効果によってオピニオン十字軸が左右プレッシャーリング(V字溝)を押し広げます。
コレを「カム作用」と言います。

コレによって、交互に配列されたクラッチプレート(ドリブン・ドリブン)が押し付けられ、デフケースとサイドギヤがクラッチプレートを介してつながる。
このクラッチプレートは左右ともに設けられるので、結果的に左右サイドギヤが繋がっている事になります。

左右サイドギヤはクラッチプレートを介して繋がっているので、左右サイドギヤ結合率(ロック率)はカム作用に応じて変動する。カム作用は駆動力と慣性力のバランスによるものであり、コレが「トルク感応型」と呼ばれる所以である。
決してメカニカルロック(ロック率100%)ではありません。

コレは、車軸が制動力、デフケース側が慣性力となるので力のバランスがアクセルON時とは逆になるからです。

カム作用はV字溝角度によってその特性を任意に設定する事ができます。 /p>

LSDはカム作用による特性の違いから、大きく3分類される。

  1. V字溝角度が左右対象であるもの・・・「2WAYカムタイプ」と呼ぶ。
    アクセルON/OFF両方でLSDが効く仕様。
  2. V字溝角度が左右非対称であるもの・・・「1.5WAYカムタイプ」と呼ぶ。
    アクセルOFF時のLSDの効きが弱い仕様。
  3. 時溝角度の一方が垂直であるもの・・・「1WAYカムタイプ」と呼ぶ。
    アクセルOFF時のLSDの効きがゼロである仕様。
イニシャルトルク

サラバネによって多板クラッチに常時圧力を掛けています。
この圧力による多板クラッチの摩擦トルクを「イニシャルトルク」と言います。

イニシャルトルクには2つの役割があります。

  1. ある程度以下のカム作用を制御する。→微笑駆動力変化によるハンチング防止。
  2. 差動・空転時のカム作用を助長する。→ピックアップの向上。
また、イニシャルトルクを高くすると、常時LSDが効き放し(トルク感応でない)になり、旋回性の悪化を招く欠点があります。
これら相反する役割と欠点を調和するには、車軸のスペック(出力、運動性能)を念頭に,用途に合わせた設計及び調整が必要になります。
例:
レース、競技・・・・イニシャルトルク高め→LSD効き優先
ストリート・・・・ イニシャルトルク低め→トルク感応優先

HPへ戻る