M2 1028のエンジン再生

M2の1001(B6)と1028(BP)は各限定車と言う事で、いまだに根強い人気がある。
そんな中、すでに長く所有しているオーナー達が考えているのが、エンジンO/H。

1001(B6)ついては過去マルハのWEBで紹介しておりますが、今回は1028(BP)について紹介をして見ます。
マルハでのO/H例も、実車が限定車だけに多くはないが、分解時にいつも気になるのがピストンの状態。
1001も1028もどうも少しノッキングが出やすいところがあり、こんな日常のコンディションがボディブローの様に効いてくるのだろう。
メーカーでの設定としては、キチンとしたデーターに基づいてプログラムは練り込んであるに違いがないが、使用過程のなかでエンジン内部のスラッジやエアフロメーターのズレ、社外パーツ装着によるバランスの乱れなどが影響してくるのかもしれない。
オリジナルに拘ったオーナーの方は、そのまま現状を維持されるのがベターとは思いますが、少し仕様を変えていこうと試みる方はプログラムの見直しは視野に入れながら、M2チューニングを楽しまれることをお勧めする。
一言、誤解なきよう添えておきますが、M2の車両すべてが“そうなのだ”と言うことではなく、チューニングをされて販売されている車なのだから、STD車両に比べ少しだけ慎重になってくださいと言うアドバイスと思って頂ければ良いと思います。

今回入庫の1028はエンジンからは異音が発生し、オイル消費も甚だしく発生していた状態で、どうも調子が宜しくない。
ユーザーとの事前やり取りのなかで、最悪の場合は再生できない可能性も十分あり得ることを説明した上で作業に入る。
1028のエンジンは気持ちよく吹き上がるのが特徴で、大きくパワフルなものではないが、ストリートで遊ぶには十分なスペック。

先ずはカムシャフト。
IN側のみが専用品となっていて、EX側はSTDな標準カムが装着。
カムプーリーもSTD品で、1001のような専用品とはなっていない。もっとも1001の場合は他からの流用カムを使っている為に、標準カムのコマずらしと言うメーカーとしては裏技的手法で対策している。
IN側カムシャフトは、作用角に250度程度のもので、リフト量もさほどは高くはない。
以下に1028のカムスペックを記載します。

マルハ実測値
IN:リフト量/8.5mm 作用角/248度 中心角/117度
EX:リフト量/8.5mm 作用角/248度 中心角/110度
オーバーラップを少なめにしてアイドルの安定感を狙っている。
リフト量は、スタンダードのままで、IN側の作用角を若干高回転に振ったのが1028のカムの特徴だ。

腰下はピストンが専用品になっている他は、特に目立った仕様はなく、1028のエンジンはカムとピストン、これに、専用のエアクリーナー、エキマニ、そしてECUで構成されている。
これだけでも立派な特別仕様と言えるが、その気になれば真似のできないレベルではない。
今回のO/Hでもっとも深刻な部分が、ピストン。

ノッキングによりピストンのダメージが酷い。
この状態でもオーナーは県外から自走で持ち込まれた。
結構、動くものだなぁと関心さえする。

分解時に頭を抱えるほど状態は悪く、再使用は不可。ブロックにも傷が入り、かなり深刻な状態であった。
オーナーには状態を説明しながら、今後の対策を話し合ったが、基本的にはオリジナルに拘る再生を希望されている。
とは言え、すでに生産中止となっているエンジンパーツであり、メーカーからの供給は有り得ない。
アフター市場ではさらに期待も出来ず、マルハの倉庫を漁って見ると、マツダスピード製の未使用ハイコンプピストンが1セットのみ発見。
おまけに、リングまでセットされている。
そのままの形はほとんど同じなのだが、違いはトップ。
睨めっこをしながら考え込むんでいると、フッと思いつ。
“どうせ同じ型で作っているに違いがない”と予想が思い浮かび、軽く採寸をして、図面に起こしてみる。

左:1028のピストンを採寸。
右:マツダスピード製ハイコンプを採寸。
図面で見ても1028の方がストリート向けに設計されていることが分かる。

“やっぱり。”と確証したのは、比較した図面からマツダS製ピストンのトップを再加工することで1028ピストンが再生できることである。

勿論、加工費は別途発生するが、新しい1028ピストンが入手できる朗報をオーナーにも報告。
仕上がったピストンが以下になる。

トップの加工が仕上がったマツダS改1028再生ピストン

ご覧のとおり、オリジナルでの前方を現すポンチマークはないが、まったく同じデザインで再生された1028ピストンである。

トップ形状やピストン裏側もまったく同じ仕様。
同じ型から両者のピストンは製造されたものと推測する。

後は、丁寧に再生努力に終始。
ホーニングも最小限度に留めながら、狙ったクリアランスを確保し、クランクも曲がり修正やラッピングに余念がない。

1001や、1028のエンジンは当時限定車として販売されていても、結構流用品、あるいは流用型で製品を調達されているものが多く、何とかなる部分もある。
ただ、今回のマツダS製ハイコンプピストンもマルハで在庫管理されていたに過ぎず、これもまた同様にメーカー廃盤部品となっている。

用意が整い後は組上げるだけ。
ここまで来るのに結構な時間を費やした。

今後、1001、1028のオーナー達がどうやってO/Hをしようか、悩まれることになるのだろうが、ダメージによっては完全再生が難しいと考えるべきで、特にピストンは代替の方向も視野にいれながら検討しなくてはならないと思います。

マルハでは、常に乗りやすい、親しまれるチューニングを提唱しているだけに、1001、1028の分解、O/Hのデーターはチューニングの参考資料としています。
STDの標準エンジンを1028風に仕上げることも可能なわけで、さらに1028スペックを上回るストリートチューニングも当然出来るわけです。
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