新ファイナル・ギヤ講座

当社ではマルハLSDの他にファイナル・ギヤ各種を取り扱っています。

今まで苦労していたNA6CEにも新たに設定が出来て、チューニングの幅が随分と広がりました。
根本的なメカニズムから、用途や効果について改めて紹介したいと思います。

 

【ファイナル・ギヤとは】

先ずはメカニズムから説明して行きましょう。
一般ユーザーからはファイナル・ギヤとは何の事ですか? と単純なご質問をいただく場合もあります。 
ファイナル・ギヤとは左右の後輪タイヤの中心に位置するデファレンシャルを構成する一部です。

ファイナル・ギヤは“ピニオン・ギヤ”と“リング・ギヤ”のセットで構成されます。




エンジンからの出力をミッションの各ギヤによって回転操作し、そしてデフケース内の
ギヤによって更に回転を落としてドライブ・シャフト、タイヤに伝達させます。
ロードスターの様なFR車(後輪駆動車)はトランスミッションとデファレンシャルは分かれていますが、FF車(前輪駆動車)はミッションケースの中にミッションギヤとデフが一体化されて組み込まれています。 
但し、レイアウトは異なっても基本原理は同じです。




エンジン/トランス・ミッションからの出力はプロペラシャフトを介し、デファレンシャルに伝達され、デファレンシャルから左右のドライブ・シャフトに分かれてタイヤまで通じています。
デファレンシャルの内部にあるピニオン・ギヤとリング・ギヤのセットをファイナル・ギヤと呼びます。
このギヤ比を換えて、チューニングを楽しむのです。

プロペラシャフトとピニオン・ギヤは一体化して回転しています。
この回転をリング・ギヤで“最終的に減速”しながら左右のドライブ・シャフトに振り分けます。
その名の如く、ファイナル・ギヤなのです。
例えばエンジン回転数が4,000rpmでシフトが5MTの4速( ギヤ比1.0)とします。
プロペラシャフトは同じく4,000rpmで回転をします。ピニオン・ギヤも同じ回転数です。
この時、ファイナル・ギヤのギヤ比が4.0(ピニオン・ギヤの歯数は10枚/リング・ギヤの歯数は40枚)であれば、リング・ギヤは1,000rpmに回転数が落とされ、同じくドライブ・シャフトとその先のタイヤは1,000rpmで回転する事になります。

ここで、ファイナル・ギヤを5.0(ピニオン・ギヤ 10枚/リング・ギヤ 50枚)とすれば4,000rpmの回転数は800rpmに落とす事が出来ます。
逆に3.0(ピニオン・ギヤ 10枚 / リング・ギヤ 30枚)にすれば1,333rpmとなります。
分かり易いように、エンジン回転数を一定にしてファイナル・ギヤ変更によるタイヤの回転数の変化で見ましたが、あるコーナーにおいて旋回スピードが一定とすると(タイヤの回転数が一定)、ファイナル変更によりエンジン回転数に変化が出てきます。
失速気味のコーナー立ち上がりで回転数がいつもより高くキープできれば、加速良く立ち上がれる状況となるわけです。
全てにおいて都合が良くなる分けではなく、適材適所となりますが、有効に使えば非力なロードスターにとってはファイナル・ギヤの変更は非常に有効なチューニング手段と言えます。

【エンジン出力を上手く引き出す】

今度はエンジンパワーの観点から考えて見ましょう。
エンジンパワーは放物線状に変化します。ピーク時に発生するマックスパワーがカタログ表記されます。
NA6CE・B6であれば120PS・6500RPM となります。
理論的には6500回転辺りを一定に保ちながら走行できれば出力を無駄なく活かせることになりますが、実際の走行では走行状況に応じたアクセルワークによりエンジン回転の上昇・下降、それに伴うシフトチェンジを繰り返します。 
つまり実際には一定に回転を保ちながら走行する事は出来ません。

そこで考え方をパワーバンドと言う、ある一定の出力範囲に置き換えてエンジン出力を考えます。

例えば、4,000RPM〜7,200RPMの間で操作することを前提にサーキットをシュミレーションします。
タイトなコーナーで2速に減速、苦しいクリッピングを取ると回転が3,000rpmまで落ち込む。
この時のファイナルが4.1であれば 4.7や4.8などのファイナルに変更することで落ち込む回転を上昇させ、上手く操作することが可能となるのです。

また、ストレート全開のままリズム良くコーナーに進入したいところ、2速では回転が天井打ち、3速に入れると直ぐにコーナー進入で2速にシフトダウンとリズムが悪い。
この場合のファイナルが4.3であれば4.1に変えて2速の引っ張りを伸ばす、あるいは4.7辺りに変更して2速の吹き上がりを早め、3速を有効に使うと効果的なのです。

つまり、“タイム短縮を目的”としたファイナルの変更は走るステージに合わせてこそ有効な物になるのです。
言い換えれば合わないファイナルでは折角掛けた手間が無駄になる事もあるのです。
さらに付け加えれば、一つのファイナルで何処のサーキットもカバー出来る物では無いと言うことです。

国内殆どのミニサーキットが1〜2速のシフトレンジを主として周回すると思われます。
2速のみで走り切るのは中々難しいはずです。
やはり3速を有効に使えればエンジンの負担も軽減でき、リズムも良くなるケースが多いはずです。
そう言った意味では 4.7、4.8辺りが範囲は広く、効果的と考えます。
実際にマルハにご注文頂くファイナルセットの中で4.7、4.8が圧倒的に多いのも事実です。

回転を全体的に高回転型にキープしたままでドライブできるのですから、別物のエンジンで走っているような錯覚に落ちる事もあります。 
使用域トルクが増してピックアップが良くなります。 パワーの出ている領域でエンジン回転をキープできるのですから当然です。
但し、全体的に高回転型になれば普段も高回転型に移行する事になり、燃費が多少ですが悪くなります。 
高速道路の巡航などは5速が少々はウナル事になります。
この辺りは妥協しなくてはなりません。

【 ファイナル変更による他の効果 】

ファイナル変更による効果はコーナー立ち上がりやシフトのリズムだけではありません。
ブラインド・コーナーの様に出口が見えないコーナーではハーフアクセルで上手く挙動をコントロールしながら出口が見えるまで我慢。
回転数がいつもより高めにキープできれば、トルクやタイヤのグリップ力が増しより安定してトラクションが掛ける事ができます。
更に高い速度でコーナー旋回が可能になるのです。
トラクションとはタイヤにトルクを伝達する事です。
コーナーで遠心力に負けずに前に進むのは、タイヤの前に蹴る力が遠心力に打ち勝つからです。(LSDも大きく影響します。) 
エンジン回転数により発生トルクが異なります。 
トルクの厚い回転領域で旋回ができればブライド・コーナーや高速コーナーに於ける安定感はグッと増します。

他にはエンジン・ブレーキの効き方も変わってきます。
ローギヤ化したファイナルで有効にエンジン・ブレーキを駆使して、進入をつめる事が可能です。

サーキットに於けるタイムアップやコーナーでの安定感などを例に説明しましたが、普通に峠をドライブされる方にも、非常に効果的です。
エンジンにはライフを狙ってさほど手を入れたくない。
いつも普通に乗る事が多く、サーキット走行を特に意識しているわけでは無い。
ただ気持ちよく走りたい。
そんな方にこそ、効果があるかもしれません。
タイムなどを気にしない、単純に気持ち良い加速感は確実にドライビングを楽しいものに換える筈です。

【 各種ファイナル・ギヤの設定 】

純正標準ファイナル

NA6CE用純正   4.3
NA8C(除くSRリミテッド・Sr-2)用 純正 4.1
NA8C(SRリミテッド・Sr-2)用純正 4.3
NB6、NB8 5MT 用純正  4.3
NB8 C 6MT 用純正   3.99

チューニング用

NA6CE 4.555(OS技研) 4.875
NA8C   4.4  4.7 4.8  5.1

チューニング用に設定されているギヤ比は全てローギヤになるものです。

【NA6にNA8以降の大型デフをコンバージョン】

NA6CEにNA8以降の大型デフ・アッセンブリにコンバージョンすることができます。
コンバージョンに必要なものは:

  1.  プロペラシャフト
  2. ドライブ・シャフト(左右)
  3. デファレンシャル・アッセンブリ
  4. 他にボルト類も一新する事を勧めます。
コンバージョンするに当たり、ファイナル・ギヤの適正化を良く検討しなくてはなりません。
NA6CEにNA8(4.1)ファイナルやNB8(3.99)ファイナルでは立ち上がりが鈍くなってしまいます。

【ファイナル変更に伴う純正部品】

先ず、ファイナル・ギヤはセットで考えるべきであることを認識ください。
即ち、ピニオン・ギヤとリング・ギヤです。 
ピニオンとリングギヤは計算された歯当たりの相性があります。 
他比のギヤとの混合は厳禁です。
また、同比ギヤのパーツであっても混合は避けるべきです。
交換は必ずセットで行います。販売もセットで行われます。

他に必要な純正パーツは以下の通りです。

  1. ピニオン・ギヤ ベアリング (フロント)
  2. ピニオン・ギヤ ベアリング (リヤ)
  3. ディスタンスピース
  4. ミットオイルシール
  5. ロックナット

以上5点の同時交換を通常は推奨しております。

デフケース・サイドのオイルシールも出来れば同時交換をお勧めします。
これらは、ファイナル・ギヤの交換作業には関わらないパーツですが、作業工程上にドライブ・シャフトが抜き差しされるので、念のためにオイルシールは交換しておく事が望ましいためです。
“組みあがって、試乗をしたらシャフトの付け根からオイルが漏れていた”などのトラブルは時間の浪費。 
最初から万全に仕事をするのが、コツなのです。 
LSDの交換作業にも同様にサイドシールの交換はお勧めします。

【 ファイナルのギヤ比計算 】

例えば、 ピニオンギヤの歯が10枚 リングギヤの歯が43枚であれば、
43÷10 → 4.3のギヤ比となります。

この場合はタイヤ(リング・ギヤ)を1回転させるにはプロペラシャフト(ピニオン・ギヤ)を4.3回転させる事になります。

【 作業上の注意 】

ファイナルの変更はLSDを組み込む事よりも難しい作業と言えます。
LSDの装着はあくまでもファイナル・ギヤが確実に組まれている事が前提で作業されます。
ファイナル・ギヤの組み込み方が悪ければLSD本体の装着どころではありません。
ファイナル・ギヤの組み込みのポイントはピニオン・ギヤのハイト調整とプリロードの調整。

ピニオンのハイトはピニオン・ギヤとベアリング(リヤ側)の間に挟みこむシムの厚さで調整します。
本来は専用の治具が必要なのですが、当社の様な専門会社位しか所有していないと思われます。
殆どのディーラーでさえ所有しておりません。
ただ、専用の治具がなくても、熟練整備士であれば光明丹などで歯当たりの確認をし、ピニオンハイトの調整は十分に出来ます。

ミット部のロックナットを指示通りのトルクで締め上げても、大小2つのピニオン・ベアリング間に収まるディスタンスピースが適切に潰れないと、
ピニオン・ギヤのプリロードが適切にならない場合があります。
メーカーマニュアル通りだけを頼りに作業をするのではなく、互いのパーツの兼ね合いを確認しながら、組み上げる事がとても大切です。

それ故に難しい作業となるのです。

【当社での作業】

デフ・アッセンブリを当社までご発送頂ければ、ファイナル変更、LSD組み込み等の作業をさせていただきます。 
プライベーターの方々でもデフ・アッセンブリまでは自力で脱着出来るがそれ以降の作業は不安なので当社に作業依頼される方は今までに多くいらっしゃいます。 
また、当社までご来店頂ければ、日帰りにて作業をいたします。

デフ・アッセンブリに関する情報は“デフ・コン(デフ・コンプリート)”をご確認ください。

【スピードメーター補正】

 

ファイナル・ギヤ交換に伴い、スピードメーター補正をお勧めします。


NB系はパルス変換による方式のために非分解となり、スピードメーターのドリブン・ギヤを交換する事ができません。
NA 系は以下の仕様で交換が可能です。

  1. 3.9 ファイナル  :税込価格1,260(1,200円)
  2. 4.1 ファイナル  :税込価格672円 (640円)
  3. 4.3 ファイナル  :税込価格672円 (640円)
  4. 4.6 ファイナル以上:税込価格1,260(1,200円)

4につきましては、これ以上のローギヤ各種に対する個別ドリブン・ギヤの設定は今のところありません。 
従い、4のギヤで共通使用となりますが、メーター誤差はかなり改善されますので、交換をお勧めします。

画像右に見えるノックピンをポンチで打ち抜けばドリブン・ギア(左画像 赤いギア)が抜けます。
交換は難しくはありませんが専用の2mmポンチが必要です。

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